文法リバーシを読む:ユーザーズガイド02

文法リバーシを読む:ユーザーズガイド02

文法リバーシは、カタルタの取説を元絵とした「言葉のパズル」になっています。

「元絵」を確かめるのは簡単で、カードの白い面に書いてある数字を昇順で並べていくだけです。ゲームボードの左上から、画像のようにカードを並べると、元の文章が姿を現し始めます。

 

さらにカードを置いていくと、原稿用紙に一行の文章を書いたように言葉が並びます。

1から64まですべてのカードを置き終えると、カタルタの使い方が4通り現れます。ここで、すべてのカードを黒い面にひっくり返すと、また別の4通りの使い方が現れます。合わせて8通り。どれも実践的に使える使い方です。

どのような使い方がどのような順番で並んでいるのか、購入された方は、お手元の文法リバーシでぜひ確かめてみてください。

ところでこのとき、真ん中の4枚をそのまま盤面に残すと、画像のような配置になります。

真ん中にくるのは、28、29、36、37のカードです。

こちらの4枚は、あくまで配置上、真ん中にあるという理由で抜き出されたものなので、言葉の組み合わせとしては十分な意味をなさず、全体から切り離された断片にすぎません。しかし、白黒が交互になるように2枚裏返すと、ある一つの可能性が見えてきます。

この配置をそのままリバーシの開始時の4枚として使ってみたらどうなるでしょう?

続いて白か黒のカードが1枚、盤面に追加されることになりますが、その位置は当然、同じ色のカードを挟み込めるマスに置くのがリバーシのルールです。このとき、文章全体が言葉のパズルになっていることを同時に活かす方向性が考えられます。

全体のマスに1から64の数字が割り当てられているわけですから、カードの数字とマスの数字を合わせるという制約を設ければ、置きどころは1箇所に限られます。問題はカードを置くタイミングです。あくまでゲームのルールに則ってマスにカードを置きます。カードの置きどころは決まっているけれど、どのタイミングでどこに置くかはゲームの進行に委ねるのです。

詰将棋ならぬ詰リバーシといったところでしょうか。ただし、詰将棋とは異なり、文法リバーシには必ずしも一つの「正解」が存在するわけではありません。ここでは、戦略や解釈によって多様な「正解」が存在するため、それぞれのプレイが独自の意味を持ち得るのです。

白と黒のカードを2人のプレイヤーで分けると話がさらに複雑になるので、ここでは一旦、1人で白役と黒役を兼ねて進める例で説明を進めます。

ゲームが終わったとき、つまり、カードをすべて配置し終えたとき、パズルの元絵であるカタルタの取説テキストの変形バージョンが現れます。一つのマスに黒と白のどちらが置かれるかは、リバーシのルールに従って決まるため、文章をつくる観点で言えば決して思い通りにはいきません。しかし、多くの場合、元絵の文章の構造を引き継ぐため、読めないほどに文章が壊れることが少なくなります。ですから、取説文としては、部分を差し替えた代替案を提供されることになるのです。

この使い方は、ユーザーズガイド01で紹介した使い方と比べて、偶然性と必然性のバランスが異なります。偶然に左右された結果でありつつ、必然に支えられている割合が大きいため、読める文章が提供される確率が高くなるのです。

そうすると、当記事のタイトルに示したように「文法リバーシを読む」にあたり、この使い方はとても興味深いバージョンになると思います。なぜなら、勝負のプロセスによって文章の細部が変わるため、それは読み終えることのない取説を提供されることに等しいからです。

2人のプレイヤーで勝負する場合は、両者とも勝ちたいと思ってプレイする限り、すべてのカードがどちらか一色になることはまずないでしょう。そして、競争的な要素と思惑、偶然と必然のせめぎ合いの結果として、文章は混ざり合い、常に新しい使い方が提示されることになるでしょう。