意味の裂け目

意味の裂け目

文法リバーシ人生リバーシは、カードに書かれた言葉をマス目に置いて、つながりのある文章を作り出すボードゲームです。その中で、誰もが一度は戸惑いの瞬間に出会います。

両リバーシともに、カードの文言については注意深く選んでいるものの、全ての配置において言葉がスムーズにつながりを見せるわけではありません。目の前に、壊れた書き言葉が並ぶことがあるのです。言葉の組み合わせが、時に笑いを生み、時に詩情を醸すこともありますが、救いようもないくらいに壊れているときもあります。そのとき私たちは、戸惑うしかないのでしょうか。戸惑う代わりにできることは何でしょう。

どうすれば、その後の時間を充実させることができるでしょうか。

私たちは普段、言葉と言葉のつながりを意識せずに話したり書いたりしています。しかし、アナログゲームという形で断片的な言葉に向き合うとき、その「つながり」が妙に新鮮に感じられることがあります。普段と少しだけ違うことをすることで、意識がフォーカスするポイントがズレ、体験の質が変わる、ということが起きます。そこで、その不完全なつながりをよりフラットに眺めるため、「意味の裂け目」が現れたと捉えたらどうでしょうか。

意味が裂けている。避けているのだとすれば、そこから何かが噴き出してきそうです。あるいは、何か染み出してくるかもしれません。この想像の延長線上にあるのは、「書き言葉のつなぎ目が不十分なのであれば、口頭で補えば良い」というシンプルな解決策です。

唇や舌を動かして、耳をすませ、目の前の光景に意識を手向けてみるのです。ひと言目の言葉があなたの口からこぼれたとき、目の前の人はどんな表情をするでしょうか。表情がパッと明るくなったのなら、きっといい考えだと思ってくれたに違いありません。そのとき、あなたは、続きをもっと継ぎ足したくなるでしょう。でも、相手の表情が曇ったら、あなたは別のアイデアを探して、考えをぐるぐると巡らせることになるでしょう。

最初は、カードを盤面に「配置する」ことに集中していたはずです。つまり、「書く」ことに取り組み、自ずと言葉を「読む」という行為に取り組んでいた。ところが、意味の裂け目に気づいたあたりから、意味が通るように声で話を補うため、次第に「語る」という行為にシフトしていくことになるのです。

さらに、その語る行為は「語り合う」へと発展し、これまで思いもよらなかったアイデアやつながりが形になり始めることでしょう。もしかしたら、その場に居合わせたことの意味がたくさん見つかるかもしれません。

そんなわけで、盤面のカードの言葉がつながらなかったとしても、私たちはもっとリラックスして良いのかもしれません。そこに、私たちを縛り付けるような正解は存在しないからです。意味の裂け目は、チャンスであり、自由への扉なのです。その扉の向こうには、きっと新しい発見や可能性が待っているはずです。