精神疾患のリハビリテーションでの実践例


日本福祉大学の中村泰久様より実践例をご共有いただきましたのでご紹介します。 中村様はご自身の専門である精神疾患を持つ方へのリハビリテーションにカタルタを使用されているそうです。貴重な機会をいただき感謝いたします。

医療・福祉の現場で、どのようにカタルタを活用されているのか。同業界はもちろん、業界が違っても参考になるところが大いにあるのではないでしょうか。

2つの利用用途

  1. 精神疾患を持つ方へのリハビリテーション
  2. 講義の中で学生に

主に1の用途で具体的にはどう使われたのか、また使用前後での変化について教えていただきましたので見ていきます。

1. 精神疾患を持つ方へのリハビリテーション 

利用の背景

精神疾患を持つ方は見る・感じる・聞く・話すなどの認知機能が低下すると言われています。それにより自由な発想(発散的思考)が乏しく、即興で表出しづらいといわれています。そのため、発言が定型化しやすい傾向がありました。例えば「昨晩はよく眠れたので、今気分はいいです」などです。もう少し、精神疾患を持つ方が日々考えていることや会話上の表現の豊かさを引き出せる方法がないかと考え、カタルタを使用しました。

日々考えていること。会話上の表現の豊かさ。どちらも精神疾患を持つ方を理解し、手助けするための手がかりを増やそうとされているものとお見受けします。

具体的な使い方

ルールはカタルタを3枚配り、①今の気分を10点満点(10点がとても良い、1点がとても悪い)で言う。②その点数の理由を言う。③配られた3枚のカタルタを使用してそれに続く話をする(3枚使用できたらとても良い、2枚、1枚でもOK)としました。

始まりの一文ではなく、まず気分に点数をつけ、理由を語り、その後与えられたカタルタワードを自分で選んで使って話す。語るにも助走があり、徐々に言語化を進めていくというステップが設けられています。その過程に伴走しながら理解を深めていくようです。

カタルタの有無で何が変わるか

表現が次のように変わったとのこと。(※プライバシー保護のため、内容には中村様による変更が加えられています)

「今の気分は2点です。昨晩夜遅くまで日本代表のサッカーの試合をTVを見ていたから、今はあまり気分がよくありません。さすがに予選では負けないだろう。と思って見ていましたが、やっぱり、勝ちました。 そして、次から強豪のチームと対戦が深夜にあるのでまた寝ずにサッカー見ちゃうなぁと少し困っています。」

カタルタを使う事で今の気分とそれに関連する情報や考えている事などを接続詞が視点を変えるため表現が多彩になりました。

専門的に考えると、自身の出来事を配られたカタルタで話すうえでの効果的な接続詞の順番や組み合わせをその場で考えることは認知機能を活用し、日常生活での会話や対応の即興性を養うと思います。

カードは即興でめくるのではなく、順番や組み合わせをその場で考えるという行為に意義を見出されています。それが「認知機能の活用」や「日常生活での会話や対応の即興性を養う」とされています。リハビリテーションが目的とのことですから、その場で閉じた体験として計画されたものではなく、日常生活へ少なからぬ影響を期待しているものでしょう。理論的な詳細はわかりませんが、大いに関心を持ちました。

2. 講義の中で学生に

受け持たれている講義でも活用されているとのこと。異なる場面ではまた違った使い方をされているようです。

具体的な使い方

同様に講義の中で学生にも使っていますが、盛り上がります。カタルタによる不確定性とその場で文章を考えていく即興性が若者にはラップ的な印象なのかもしれません。

今回は具体的な手順についてお伺いしておりませんので詳細はわかりませんが、即興性が高く、リハビリでの使い方とは違ったもののようです。

普段やらないことへのチャレンジ感があるのか、普段親しんでいる感覚が学びの場に導入されたことの快感があるのか。伺ったことに限りがあるため想像任せになりますが、とにかく「盛り上がる」からには話者に対する注目が集まったり、障壁を乗り越えるドラマが大なり小なり生まれたりしているのでしょう。 自らの言葉で周囲が湧き、場に貢献している実感が得られる。参加していることの意義が深まっていることが自覚される。その充実感や高揚感は決して他人事ではなく、想像されるところです。

盛り上がったことを受け、そこからどう発展させていくのかという議論があるでしょうが、これについては機会を分けて検討したいと思います。

チェックポイント

今回のチェックポイント

  • 最初のステップで気分を評点する。
  • 段階的に言語化を進める。(気分を評点→理由を話す→カタルタ自由選択で話を続ける)
  • カタルタは話者の自由選択。
  • 話者がめくる枚数を自分で決めてよいものとする。

今回カタルタで起きた変化のリスト

  • 表現が多彩になった。(利用用途1)
  • 盛り上がった。(利用用途2)

実践例として伺うお話ですから、カタルタ以前にその場には主題があり、それが日常へ持ち出されたり、逆に日常から持ち込まれたりするという運動があります。この内と外の移動にともなって起きることと、別用途へ転用しようとするときに起きることには繋がりがあるのではないかと思います。いわばこの縦糸と横糸の交点をよく見ようとするなら、「認知」に対して理解を深める必要がありそうです。

医療や福祉の現場でカタルタが実際に活用されていることは、率直にうれしいことです。直接お話を伺うことができ、大変ありがたい機会でした。一方で身の引き締まる思いでもあります。今回のご報告には出てこなくとも、専門家ならではの配慮や注意の手向け方があることでしょう。場ごと、人ごとに物事のバランスが変わるという側面もあるでしょう。そんな中で事例に学べることがあるには違いなく、いくらツールの使い方をユーザー様に委ねているとはいえ、せめて実態に根ざした発信や探求に努めたいと思うのでした。

今回も、多くのヒントと考える機会をいただきました。中村様、改めましてありがとうございました。

※ご自身の実践された事例を共有いただける方、見聞きした事例をご紹介いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。ご感想や気軽なご意見もお待ちしています。